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横浜地方裁判所 昭和61年(わ)2129号 判決

本籍

鹿児島県鹿屋市南町三〇三〇番地

住居

横浜市鶴見区下末吉四丁目二二番一三号

会社員

楠原薫

昭和一四年八月一〇日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官中嶋三雄出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年及び罰金二二〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、横浜市鶴見区鶴見中央四丁目二五番一〇号ほか九か所において、「北国」等の名称でポーカーゲーム店を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、ポーカーゲーム店の売上記録を破棄するなどし、事業によって得た利益を仮名預金等として蓄積する等の不正な方法により所得を秘匿したうえ

第一  昭和五六年分の実際所得金額が四五八四万五六五三円であったにもかかわらず、昭和五七年三月一五日横浜市鶴見区鶴見中央四丁目三八番三二号所在の所轄鶴見税務署において、同税務署長に対し、同年分の総所得金額が六〇万円でこれに対する所得税が三万八五〇〇円である旨の偽りの所得税申告書を提出し、同年分の正規の所得税額二一七五万四一〇〇円と右申告税額との差額二一七一万五六〇〇円を免れた

第二  昭和五七年分の実際所得金額が七七九七万四四三〇円であったにもかかわらず、昭和五八年三月一一日前鶴見税務署において、同税務署長に対し、同年分の総所得金額が五二一万四〇〇〇円で、これに対する所得税が一五万四八〇〇円である旨の偽りの所得税確定申告書を提出し、同年分の正規の所得税額四二七五万一八〇〇円と右申告税額との差額四二五九万七〇〇〇円を免れた

第三  昭和五八年分の実際所得金額が五〇九六万六〇六〇円であったにもかかわらず、昭和五八年三月九日前鶴見税務署において、同税務署長に対し同年分の総所得金額が九五六万五〇〇〇円で、これに対する所得税が六四万二二〇〇円である旨の偽りの所得税確定申告書を提出し、同年分の正規の所得税額二三九一万八一〇〇円と右申告税額との差額二三二七万五九〇〇円を免れた

ものである。

(証拠の標目)

注 特にことわらない場合は大蔵事務官の作成である。

判示第一の事実につき

一  修正貸借対照表(甲二)

一  脱税額計算書(甲五)

一  押収してある昭和五六年分の所得税の確定申告書一袋(昭和六二年押第一四号の4)

判示第二の事実につき

一  修正貸借対照表(甲三)

一  脱税額計算書(甲六)

一  押収してある昭和五七年分の所得税の確定申告書一袋(昭和六二年押第一四号の5)

判示第三の事実につき

一  修正貸借対照表(甲四)

一  脱税額計算書(甲七)

一  押収してある昭和五八年分の所得税の確定申告書一袋(昭和六二年押第一四号の6)

判示全事実につき

一  申告所得税の納付状況照会に対する回答書

一  現金調査書(甲八七)、預金調査書(甲八八)、賃借権調査書、保証金調査書、ゲーム機械調査書(甲八九)設備造作調査書、器具備品調査書、車両調査書、出資金調査書、貸付金調査書(甲九〇)、会員券調査書、店主勘定調査書、支払手形調査書、借入金調査書(甲九一)、減価償却引当金調査書(甲九二)、給与所得控除額調査書、申告所得調査書、利子所得調査書、総合課税の譲渡所得調査書、福本栄子勘定調査書、有川邦子勘定調査書、松井勉勘定調査書、仁平和子勘定調査書

一  楠原美代恵、重村勝彦、佐藤晶美、松井勉、仁平和子、小林政江、川上和男、瀧史子、中村幸雄、福本栄子、湖東寿恵子、小沢衛、樋口正、福田昭正、井上肇治、原和孝、有川邦子、有川秀行、竹島春三、池間実、熊澤廣通、内藤保輝、中沢教輔、小森正枝、関洋次郎、友井重吉、金仁昌、酒井雄幸、岡村伸泰、奥津民男、水野忠次、松井信江、天明崇の大蔵事務官に対する各供述調書

一  松井勉、仁平和子、福本栄子、有川邦子、小西繁夫の検察官に対する各供述調書

一  被告人の大蔵事務官及び検察官に対する各供述調書

一  被告人の当公判廷における供述

(法令の適用)

一  罰条 判示各所為につき所得税法二三八条一項

一  刑種の選択 懲役刑と罰金刑を併科する。

一  併合罪の処理 懲役刑につき刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重をする。)

罰金刑につき所得税法二三八条二項、刑法四五条前段、四八条二項

一  労役場留置 刑法一八条

一  執行猶予 懲役刑につき刑法二五条一項

(裁判官 森眞樹)

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